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劇場 著者 又吉直樹

劇場
著者 又吉直樹


新たな知識を求めてこの本と出逢う。
いろいろな人生を知る事は、ビジネスにおいても不動産投資においても大切なことだと私は思います。
ビジネスは、結局は人と人とのやりとりです。
だからこそ、他人の気持ちを知る必要がありますし、他人の考え方を知る必要があります。
結局、そこにあるのは人と人のやり方、考え方だからです。
今回の又吉先生の物語は、いかにも又吉先生の物語らしい物語となっております。
演劇を題材とした、若い男と女の物語となります。
東京と言う大都会で、苦しみながら夢を追いかける男女の2人、そこには夢を追いかける物語と、男と女の恋愛物語、そして男の身勝手な考え方を知ることができます。
まるで大宰治先生のような色の物語ではないでしょうか?
男の心の弱さ、考え方の弱さ、小心者の心情をうまく描かれているのではないかと思います。
前回の、火花も同じように夢を追いかけて東京でがんばる若者の物語だった記憶があります。
今回も同じように東京でがんばる若者の夢、苦しみを追いかけているような気がします。
そこには共感があり、同感があると感じることができます。
人間、東京に憧れている以上1度は夢を追いかけたことがあるのではないでしょうか?
そして誰もがその夢に敗れて、現実的な社会、現実的な生活に妥協していくのではないでしょうか?
いかに夢を追いかけることができるのか、いかに夢を追いかけ続けることができるのか、そしてその夢をいかに支え続けることができるのだろうか?
そこに2人の将来はあるのであろうか、そこに2人の将来は描かれているのであろうか?
この葛藤は物語を読んでいるととても切なくなってきます。
しかしこの葛藤を知って同感できる人、共感できる人がこの世の中に増えていけば、他人を思いやる気持ちを持った人間が増えていくのではないでしょうか?
そういう目線でこの小説を読んでみたら、いろいろな方に読んで欲しい小説となるのではないかと私は思います。
今の世の中自分のことしか考えてない人が多いですし、自分さえよければいいという考え方が増えてきていますし、そしてそーゆー人が成功している現実もあるのです。
しかしそういうの世の中が是正されるのであれば、それは応援すべきではないでしょうか?
私たちは笑顔のある生活を求めています、私たちは関心のある生活を求めています、私たちは、私たちこの未来に…。
あなたにはどんな1行が届き、どんな言葉が残りましたか?

芥川賞作家・山下澄人が、又吉直樹の新作『劇場』を読む

二年前の春、ぼくが書いた『コルバトントリ』という小説を飴屋法水さんが芝居にした。ある日の終演後、小柄な男の人が話しかけて来た。男の人は小声で「又吉です」といった。又吉直樹さんだった。もちろん何年も前からテレビでぼくは又吉さんを見ていた。それでも名乗られるまでその男の人が又吉さんだとぼくは気がつかなかった。又吉さんが『火花』を発表する少し前のことだった。

今年の春、二作目が発表された。タイトルは『劇場』。演劇の界隈が題材にされていた。見てもらった劇が書かれているわけじゃない。

人のすることのほとんどは説明なんかできない。しかし「こたえない」を世の中は許さないから、仕方なしに外に流通する「物語」を使って説明らしきことをしようとする。もちろんそれでは何も語れない。語れてないことが語りながらわかるから、わかってもらえない、誤解されている、という呪いの孤独へ首までつかる。

又吉さんは小説で、「理解されないかもしれない」という呪いのかかるその外へはみ出ようとする。そのうえで真正面からその「理解されない」を丁寧に語る。

はじまってすぐの、通りがかった画廊で主人公永田が沙希と出会う場面。たまたまそこにいただけの沙希を『この人なら、自分のことを理解してくれるのではないかと思った。』と永田はいきなり話しかける。話しかけた言葉だけ書き出す。

「靴、同じやな」

「えっ」

「靴、同じやな」

「違いますよ」

「同じやで」

そしてもう一度、今度はやさしく

「同じやで」

ここだけこう抜き出せば永田は気持ちの悪い男でしかない。事実永田は気持ちが悪い。又吉さんは「永田はなぜにこうも気持ちが悪いのか」は書かない。気持ちの悪い永田を気持ちの悪いままその状態の細部だけを書く。丁寧にそれを書く。この世での時間が長くなると、自意識でどうにもこうにも身動きが取れず気持ちの悪いものでしかなかった「かつて」をなかったことにしてたいがいはツッコミにまわる。世間の側につく。その方が通りがいい。又吉さんの小説で出てくる人は違う。ボケとしてそこにいる。理解されないであろう、気持ちの悪い、ボケのままでいる。

これでええんや、と読みながら思う。

「ええかどうかわからんけど」

と永田は笑いもせずにいう。

「こうしかできひん」

と残念そうに小声でいう。

評者:山下 澄人

(週刊文春 2017.06.08号掲載)

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